不採算品を再調査、製薬業界に臆測広がる

2022年12月15日 11:13
カテゴリ: 日記

改定議論決着前に厚労省、「支援策打つのでは」との見方も

日刊薬業 2022年12月15日

 物価高騰などで不採算になった医薬品を把握する厚生労働省調査の取り扱いが、製薬企業の関心を集めている。これまでの調査では不採算品が1100品目(11月18日時点)に上ることが確認され、その結果は2023年度薬価改定(中間年改定)を議論する中医協などで示されている。そのような中、医政局医薬産業振興・医療情報企画課は今月上旬、製薬各社に再度調査を依頼し、不採算品の最新データの提出を求めた。ただ、その具体的な目的が明示されていないことなどから、業界内ではさまざまな臆測が飛び交っており、「中間年改定に合わせて不採算品に何らかの支援策を打ち出すのではないか」といった見方もある。

 調査は物価高騰、為替変動の影響などを背景に不採算になった医薬品を調べるもので、厚労省が9月8日付で日本製薬団体連合会を通じ、製薬各社に依頼。原価計算方式による薬価算定を行った場合に不採算になるものが対象で、当該品目のうち安定確保医薬品や基礎的医薬品など安定供給の確保の必要性が特に高く、安定供給に支障を来しやすい品目について回答を求めた。調査の結果、11月18日までの報告分で1100品目(115社)が不採算であったこと、そのおよそ8割が「後発医薬品」と「その他の品目」(1967年以前の品目)で占められていることなどが分かった。物価高などがどのようなタイプの品目に影響を与えるのかといった情報を知る資料として、これまで中医協の議論や与党内の検討で活用されている。
 そのような中、厚労省は今月に入り、複数企業で申請資料に不備が認められたとして再度、各社に同調査を実施したもよう。あらかじめ設定した為替レートを用いて再び原価計算を行った上で、取引があったことを証明する証憑も添えてデータを再提出するよう求めたようだ。11月までに関連資料の提出や確認作業を済ませたメーカーにも再提出を求めたという。

 製薬企業関係者によると、厚労省はメーカー側におよそ2週間以内の資料提出を要請する一方、その具体的な目的については示していない。そのため、製薬企業の間ではその活用方法にさまざまな見方が飛び交っている状態だ。

 ある国内メーカーの担当者は「このタイミングで調査が求められた以上、政府内で不採算品に対する具体的な対応が検討されていると思ってしまう」と述べ、対象範囲などの検討が大詰めを迎える中間年改定に合わせた何らかの「措置」に期待をにじませる。別のメーカーの担当者も改定に伴って不採算品への対応が取られるのではないかと予測。「厚労省が細かいデータを求めるのは、対象品目の線引きに使用するためではないか」と予想した。

●「対象範囲が拡大されたら目も当てられない」

 一方、「12月に入ってからの調査だから、中間年改定で対応を取るのは日程的に難しいのではないか」との見方もあった。「不採算品の対応に充てる財源捻出のため、改定の対象範囲が拡大されては目も当てられない」といった声もある。

 中間年改定を巡っては、不採算品への対応が焦点の一つになっている。これまでの中医協・薬価専門部会の議論では、出席委員から緩和措置を求める意見や、改定対象範囲を前回から拡大して捻出した財源で不採算品への措置を取る提案などが出ている。

 自民党では社会保障制度調査会・創薬力の強化育成に関するプロジェクトチームが提言で物価高などによってメーカーなどが苦境にあると指摘したほか、同調査会医療委員会も不採算化している医薬品に対する措置が必要との認識を共有する。厚労関係議員などでつくる「製薬産業政策に関する勉強会」は供給不安を起こしている不採算品目などの改定率を一定幅緩和するよう訴えている。(大浜 隆)

これを読む限り社会保障の切り崩しですよね

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